怪異とトリックが交差する世界観「厭魅の如き憑くもの」

厭魅の如き憑くもの (講談社文庫)

 

三津田信三の刀城言耶シリーズ第一弾、「厭魅の如き憑くもの」です。

 

この本に限らず三津田信三が執筆した物語は、かなり怖いホラー要素が含まれているだけでなく、そこに本格的なミステリーが組み込まれていることで有名です。

 

むかし三津田氏の小説とは知らず「のぞきめ」を読み、そして今回の本を読んだとき「アレ書いたのアンタか!」と著者名を読まずに分かってしまうほど他にはないスタイルを築きあげています。

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ホラー小説は映像版とは違う怖さがある

 

ところで、ここ数年テレビで心霊関係の番組がめっきり減った気がします。色々と大人の事情があるからなのでしょうが、ボクは幼少期に怖いもの見たさで視聴して、最終的にトイレや風呂に行けなくなったというオチを何回か繰り返していた気がします。

 

テレビや映画に登場する霊の演出は恐怖を掻き立てられるものがあり、少なくともボクは視聴した後も強烈過ぎて頭から離れないということがありました。

 

正直に言って、小説であそこまでの恐怖を演出できるのかという疑問はありました。視覚や聴覚に最大限に訴えかける演出に対して、字を読んで想像することしかできない本でできるのかと。

 

しかし読んでみて分かりました。「小説は、自分が一番怖いと思う場面を呼ぶ」と。

 

テレビは映像や音声を提供して膨大な情報量を提供する一方、視覚や聴覚など人間の大部分のイメージを固定してしまいます。その結果、もしその演出が視聴者のツボでなかった場合、効果は半減してしまいます。

 

一方、小説は文字という情報出力の低い媒体を使います。文字をもとにするため、視覚を含む感覚すべてを自分の想像で補わなければなりません。その結果、自分が怖いと思う情報で満たされた脳内の仮想世界に閉じ込められる状況が生まれるため、ある意味テレビよりもホラーな感覚を味わうことができるのだと感じました。

 

映像と小説、どっちが怖い?

 

とはいえ、想像の中で起用される霊や怪奇現象は、テレビで見た演出をもとに展開されている部分があるので、小説の方がテレビの心霊番組よりも怖いと言うのは早計かもしれません。

 

怖がらせるため色々と研究されてきたホラーの演出方法は多様で、国によっても変化があります。

 

グロやビックリで怖がらせるパワー重視の海外ホラーだったり、うすら寒い雰囲気で外堀を埋めてからの霊を登場させる日本ホラーだったり様々です。

 

それに対して、「それらすべてを自分で加えることができるのが小説の面白いところじゃん」という小説支持派の声も聞こえてきそうです。

 

「ホラー小説とホラー映画、どっちが怖い?」

 

議論したら面白そうなテーマです。

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