「アイスマン」
ケビン・ポールセン
ネット犯罪という言葉を聞いて久しいです。
クレジットカードやATM、Amazonなどインターネットを介した現金を使わない決済方法が一般化しはじめた頃とおなじ時期だと思います。
それ以前は「個人情報の保護」という言葉の重要性がイマイチ理解されずに、ボクの周りでも「名前と住所がばれたらやばいの?近所の人たちは知ってるけど?」みたいな感じでした。
しかし、ネット犯罪が目に見えて深刻化すると同時にその重要性をイヤでも思い知らされたイメージをボクは持っています。
この本は世界最大規模のネット犯罪を犯した「アイスマン」と呼ばれる天才ハッカーについて書かれた本です。
「アイスマン」ことマックス・バトラーは1972年の10月に生まれました。マックスの父が電気屋を営んでいたこともあり、幼少期からコンピューターの扱いに長けていて、高校、大学と進んでいくうちに一層その色を強めていきました。
大学を卒業後、コンピューター関係の職に就くものの、たびたび企業や政府のパソコンにアクセスして機密情報を盗んでいたことがFBIに発覚します。
結果的に逮捕されますが、なんとこの時にFBIからスカウトを受け、政府の人間としてダークウェブに潜む犯罪サイトについての情報収集の任に就きます。
自身の知的好奇心を満たすために不正アクセスを繰り返していたマックスは、個人情報の重要性をそこまで理解していませんでした。
しかし、FBIの指示に従い犯罪サイトや他のハッカーと接触することで、「自分のハッキング能力で特定の情報を入手すれば大金を稼げる」ということに気づいてしまい、FBIに従う一方ダークウェブに自身のクレジット情報サイトなどを扱う犯罪サイトを立ち上げることを決断しました。
「アイスマン」の誕生です。
本書の随所にでてくる彼の悪歴はすさまじいものがあり、企業や国防省のパソコンにアクセスして機密情報を得るのは前述のとおりで、自身のサイト運営の邪魔になるからアメリカ最大の犯罪サイト4つを一日でつぶしたり、映画で見るよりもすごい腕の持ち主であると言わざるを得ません。
しかし、マックスは精神的に情緒不安定なところがあり、それが原因で彼が不利な状況に追い込まれる場面が何回も起こります。
これは天才的な才能を持って生れた者の運命なのでしょうか。
この性格はチェスの世界チャンピオンのボビー・フィッシャーを思い出させます。
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ボビー・フィッシャーも幼少期から1日に10時間以上もチェスをし続けられる集中力と並はずれた技量を持っていましたが、彼の素行は異常ともいえる部分が多く見受けられ、最終的に社会的に孤立していきました。
しかし裏を返すと、両者とも常軌を逸した領域に達したことにより普通ではたどり着けない高みへ行き着いたと言えるのかもしれません。
この本はハリウッド映画張りのネット犯罪の全貌とハッカーの素性を見せてくれますが、犯罪者とは法律やシステムをしっかり把握したインテリであり、それを理解していない情報弱者を食い物にするという事実を見せつけてくれもします。
騙される方が悪いとは言いませんが、ある程度の知識はしっかり理解しておく、もしくは詳しい人とすぐに連絡を取れるようにしておくことは大切だと思います。
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