「勝手に生きろ!」
(著)チャールズ・ブコウスキー
(出版)河出文庫
ダメ人間クズ人間というワードで、あなたは誰を連想しますか?
昨日までのボクだったら「カイジ」を連想していたでしょう。
しかしこの本を読み終えた今は「ヘンリー・チナツキー」と即答することにしました。
これは、主人公ヘンリー・チナツキーが職を転々としながらアメリカ中を放浪する物語です。
職をえた最初の時期はまじめに働くのですが、徐々に嫌気がさして仕事をすっぽかしてバーで飲んだくれたり、同僚の女性従業員とよろしくやったり、やりたい放題して最終的にはクビを宣告される、または自分から辞めるというオチがつきます。
カイジならここら辺で黒服に連れられてギャンブルが始まって、命と金のやり取りが見られるのですが、この本にはそんな逆転劇はなく、最初っから最後までこの繰り返しです(笑)
もうほんとに仕事をみつけてはやめて、やめて職安に通ってはバーで飲み、二日酔の体を引きづりながら職場に向かう。
これが最後の一行までつづき、そしてチナツキーはこれからもそれを続けます。
ダメ人間です。
生れてから今日まで生きたなかで一番のダメ人間です(笑)
ただ、文中でチナツキーは意外にも「安定した職に就きたい」とか「今よりもっといい環境にシフトしたい」という欲求を口にしません。
もちろんアレが欲しい、コレが欲しい、とは言いますがそれは本心ではないということが見て取れます。
これはチナツキーが職が続かない理由にも関係しているのだと思います。
1940年代、第二次世界大戦の前後にこの本が出版されたという事を考えるとその理由少しは見えてくると思います。
この頃アメリカは戦争などで疲弊して、アメリカ国民は既存の体制に懐疑的な態度をとるようになり、徐々に対抗文化が姿を現すようになります。
ビート小説の代表でもある「オン・ザ・ロード」もこの本の10年後に出版されました。
つまり、チナツキーは自分が住んでいる社会の組織というあり方、その中で生きていくうえでの流儀というものに従うことに嫌気がさしていたため、仕事が長続きしないのでしょう。
「自分はこの社会で馴染んでいくことはできないな」と半分あきらめに近い気持ちを抱きながら。
その気持ちを、かれは自身の生き方や小説を書くことで無意識にアピールしているのだと思います。
なんだかんだ言いながらチナツキーは自身の今の状況を楽しんでいるのでしょう。彼の口からたびたび発せられるユーモアからもその雰囲気が滲みでてきているような気がします。
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