「高速道路の謎 ~雑学から知る日本の道路事情~」
(著)清水草一
(出版)扶桑社新書
この本は日本の高速道路が一律1000円で利用できる政策が実施された頃に書かれた本です。
残念ながらもうその制度は廃止されて、すこし古い情報になってしまいましたが、それを補って現代でも十分に使える高速道路に関する雑学が盛り込まれています。
高速道路の歴史についての項目は、読んでいて「へえ」が多くて楽しかったです。
ドイツやアメリカで高速道路が始まったというイメージがありますが、どうもイタリアが最初らしく、その後にドイツのヒトラーが失業対策などで約7000キロに及ぶ高速道路の開発に着手したそうです。
ドイツでの高速道路(アウトバーン)開発計画の提示、および進行を担当した土木技術者フリッツ・トットは自身の案をヒトラーの目に引くように、ミュンヘンからヒトラーの別荘があるエリアまでの案を提出、もくろみ通りヒトラーはそれを気に入り、見事に採用されました。
クロソイド曲線を取り入れたのもフリッツ・トットが初めてです。
これは、直線からカーブに差し掛かる際、ハンドルを一定の速度で切り込んでいくと、ちょうど車線にそって走れるよう、徐々にカーブをきつくなっていく設計です。現在、日本を含む世界中ほとんどすべての高速道路がクロス井戸曲線を導入しています。(本文より抜粋)
あんなにデカい道路をどうやって精密に角度を測りながら建設していくのかがそもそも疑問ですが、ともかくそういった今に続く技術を導入していった土居鬱のアウトバーンは速度無制限ということもあり、世界中の高速道路マニアや走り屋にとって魅力的な道路のようです。
また、日本のサービスエリア(SA)の移り変わりについての章も設けられています。
2000年前半ごろに高速道路の民営化が実施されるまで、SAは国がバックについていて、競争原理の働かない独占状態でした。そのため利益にならなくとも問題なく、現在のSAと比べるまでもなくヒドい場所だったようです。
本書のインタビューに答えたSAの元アルバイトのエピソードを聞いてみると「やりたい放題だった」の一言に集約されるブッ飛んだ内容でした。聞いている方は楽しいですけど、実際にサービスを受ける側にとっては迷惑でしかありません(笑)
もちろん現在は民営化のおかげか、SAの質は格段に良くなり、地域ごとに特色のある場所に進化して、最近では「サービスエリアに遊びに行くために高速に乗る」という奇妙な現象も起きています。
もしかしたら私が奇妙に思っているこの現象も、数年もしたらごく自然なものになり、それを参考にしたい海外にノウハウを売ることができるようになるかもしれません。それほど日本のサービスエリアには可能性があると思います。
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