「意識と無意識のあいだ」
(著)マイケル・コーバリス
(出版)講談社
本書は意識を集中させている時の脳の活動ではなく、集中していない時の脳の活動状況についてフォーカスされたいわば「ぼんやり脳の活動報告」です。
人間は一日の50%をボケッと無意識的に考える時間に費やしていて、これは「マインドワンダリング」よ呼ばれています。
「マインドワンダリング」とは直訳すると「思考がさまようこと」という意味で、現実世界でやっている事とは全く違うことが頭の中で駆け巡っていることを指します。
「むかし起こった悪いことがフラッシュバックして、それが延々と頭のなかでリピートされる」というのもマインドワンダリングの一種です。
マインドワンダリングとは人間特有の性質ではないようで、サルや犬、ネズミなどにも見られる現象です。
ネズミに迷路を解かせる実験をしたところ、脳波を調べた際に人間のマインドワンダリングと同じパターンが見受けられ、ネズミはその後の実験で好成績を出す傾向にあったそうです。
この「悪いことを繰り返し思い出す」というのは、動物に与えられた危機回避の本能に関連しています。
無意識の領域の奥深くに眠っている記憶やアイデアとランダムに結びつけることによって、次の機会に向けての予備訓練をしているのです。
この無意識的な思考時間で脳は「ランダムに記憶とアイデアを組み合わせている」というのは昔から認知されていて、著名な学者や芸術家は散歩などをしている際にアイデアが生まれるという話もよく聞きます。
ヨーロッパでは「3B(風呂、トイレ、ベッド)」、中国では、「馬に揺られているとき、厠にいるとき、寝床にいるとき」にいいアイデアが浮かぶと言われているように、国を問わずある程度の共通点があります。
ところで、この本を読んでいるときに「80対20の法則」を思い出しました。
これはヴィルフレド・パレードという経済学者が主張した法則で、おおざっぱに言うと「20%の行動が全体の80%の成果を独占している」という経験則です。
「全商品のうち20%が売り上げの80%を占める」
「全従業員の20%が残り80%の従業員分の働きをする」
「20%が世界の富の80%を占める」
など、さまざまな事例がこの経験則に当てはまりますが、マインドワンダリングによって得られたインスピレーションが創作活動に多大な影響を与えると考えている芸術家はたくさんいて、
この無意識のなかに眠る潜在的な力を無理やり引き出すためにLSDやマリファナに手を出すことが多いそうです。
それに多少なりとも影響を受けた作品が人気を博した例は枚挙にいとまがないですが、それと同時に薬物依存によって苦しみ、それが原因で自殺や早死にするということもかなりあるようです。
命を削ってでも無意識から来るインスピレーションに頼りたいと思えるほどに、その領域から得られる”何か”は人を惹きつける力があるんでしょうね。
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