「オン・ザ・ロード」
(著者)ジャック・ケルアック
仕事やプライベートで疲れ果てても、なんとか対処して今を生きるボクたち。
それでも、一度はこう考えた事があるんじゃないですか?
「もうなんか、ぜんぶ捨ててどっか遠くへ行きたい…」
「オン・ザ・ロード」は1950年代にアメリカでカウンターカルチャーが盛り上がり始める頃にジャック・ケルアックによって書かれた物語です。
カウンターカルチャーとは日本語に訳すと「対抗文化」、つまり既存の文化や体制に反対する文化のことで、ヒッピーやロック音楽といった当時の「良きもの」と真っ向から対立する活動の事も指します。
本書は主人公のサル・パラダイスとディーン・モリアーティという二人の登場人物を中心に話が展開されていきます。
サル・パラダイスは大学をドロップアウトした後に本を書きながら生活していました。ディーンに出会ったのは当時の妻と離婚したころで、心に幾分のヘコみがあったことがディーンの生き様が一段とイカしたものに見えたのでしょう。
ディーンの過去はカウンターカルチャーの権化ともいうべきもので、少年院、浮浪者、カウボーイ、大陸横断、想像できるほとんどの事をやってのけたまさにヒップスター(風来坊)です。
そういったハチャメチャな人生の片鱗をディーンから感じ取ったサルは自分にないものを彼に見出し、彼にあこがれに近い感情を抱くようになりました。
そこでサルはディーンやその仲間たちとともに路上(ロード)に繰り出します。
本書では5回にわたり、西へ東へアメリカ大陸を横断しまくりますが、その際に出会った人物やイベント、ハプニングはジャック・ケルアック自身が実際に体験したエピソードだというのだから驚愕です。
それもそのはず。じつは彼自身、コロンビア大学を中退したのち、第2次世界大戦のあいだ船員として世界中を航海し、ケルアックと同じくビートジェネレーションのけん引役として知られた作家たちと数年に渡ってアメリカ中を放浪していました。
ところで、何十年も読み継がれている物語、いわゆる古典は時代を感じることの無い内容であることが多いです。
それは、流行していたモノを本に盛り込りこんで陳腐化することを防いでいることも要因のひとつです。
しかし「オン・ザ・ロード」は実際に存際したミュージシャン、地名、イベントなどを多様に盛り込んでいます。
それはこの物語で取り上げられたバンド名、ミュージシャン、小説などがケルアックだけでなく多くの人々のカウンターカルチャー思想に影響を与えたからだと思います。
いわゆる「参考文献リスト」として光を失うことなく、むしろ当時の熱気が現代人に伝わるほどのエネルギーを未だに放っているのかもしれません。
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