「アニメーションの色職人」
(著)柴口育子(出版)徳間書店
スタジオジブリには製作スタッフが大勢いますが、宮崎駿や高畠勲をして「この人がいないとやっていけない」と言わせた人物がいます。
それが今回の主人公、保田道世さんです。彼女は色彩設計として35年以上のキャリアを持ち、「風の谷のナウシカ」、「もののけ姫」、「となりのトトロ」、「千と千尋の神隠し」、「風立ちぬ」など、ほとんどのジブリアニメを担当しました。
欲しい色が無い?じゃあ自分で作るよ
彼女の色彩にこだわる執念は凄い一言で、無い色があれば自身で筆と絵の具で混ぜ合わせて作り出し、絵の具会社が潰れて取り扱わない色が出てこようものなら、自身で会社に交渉し、あらゆる方法を使って自分の納得する色を探し求めます。
保田さんは2016年に息を引き取りましたが、彼女の色彩設計に対する情熱は今までの作品に残されていますし、そして保田道世さんが育成した後世の色職人にも受け継がれていると、本書で言及されています。
一人前になるのに十年も必要ないけど年季の違いは滲み出る
ところでボクは、ホリエモンが「寿司職人が10年も修行するのは無駄」とツイートしたことについての記事を書きましたが、今回の保田道世さんの本を読んで認識が少し改まった部分があります。
ボクも職人が一人前として独立するまでに必要な期間は10年もかからないと思っています。
しかし、一人前として認められた後もまだ探究の道は続いており、既存の状況に満足せずに試行錯誤をしながら高みを目指すのが職人としての在るべき姿とも思うのです。
保田道世さんも自身の職の奥深さや楽しさをよく理解していました。
自身が納得できる色を探しつづけて、それを一つ一つアニメに落とし込むという人間離れした作業に35年もの間やり通してきたという所に彼女の職人魂を感じました。
身近にいる「この道ウン十年」のおじさんおばさん
どの仕事でも言えるんでしょうが、長いあいだ試行錯誤を重ねて一つの業務をやり抜いたら、見る人が見れば芸術に近いものになりますよね。
我々のような一般的なサラリーマンがやっている作業でも「うわこの人なんかスゲェことやってる」みたいな人いますもん。
そういったことを考えながら普段やっている業務をやってみれば、毎日のありふれた仕事も少しは楽しくなるかもしれません。
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