〈無料〉との共存が必須な次世代の指南書

ノンフィクション

「フリー:<無料>からお金を生み出す新戦略」

(著)クリス・アンダーソン

NHK出版

 

「タダより怖いものは無い」っていうけどぶっちゃけタダのものって多いよね、という認識をみなさん多少は持っていると思います。

 

YoutubeやHuluを使えば面白い動画が無料で観れますし、スマホのアプリやオンラインゲームは非課金勢がけっこう幅を利かせているし、携帯電話会社は契約するとiPhoneをタダでくれるし…。

 

本書はそういった無料で何かを提供するという現象がおこるメカニズムを解説しています。

 

 

無料で何かを提供するという行為におおよそ共通するものは「無料でコンテンツを提供し、それに付随するものを売ることで利益を回収する」そして「無料にすることで人々に認知されやすくする」の二つが挙げられると著者は語ります。

 

この戦略をとるために、無料で何かを提供するという行為は今に始まったことではなく、例えば1900年前半においてもカミソリで有名なジレットも無料でカミソリを提供していました。

 

当時は主流だった西洋カミソリに代わり、替え刃を使い捨てできるカミソリの認知度を上げ、新しいタイプのカミソリを習慣化させるために無料で配ったのです。

 

こういった無料でコンテンツを提供するという動きは21世紀に入っても続き、ネットが発達するとさらに加速していきました。

 

身近な例として冒頭で挙げたオンライゲームがあります。昨今の無料ゲームは時間をかけてキャラクターや装備を集めれば課金勢に見劣りすることが無いほどの内容を楽しまます。それが実現できるようなコンテンツを作り上げたゲーム製作側が期待しているのはゲーム自体、およびそこから派生するコンテンツの知名度アップ(アニメやサウンドトラック、フィギュアなど)、そして課金アイテムへの誘導です。

 

ゲームの無料提供ができるのは必要経費が少なくて済むことが大きな要素となっていますが、そういった理由で昨今ブログのアフィリエイトやYoutubeの広告でお金を得るといった新しいビジネスモデルが登場するようになったのでしょう。

 

ブログの記事や動画の作製自体はコストがかからないものが多く、仮に失敗したとしても製作者側にはほとんど損失が無いため、比較的はじめやすく、ウケたらそこそこの利益が発生するからです。

 

人間に代わるロボットの導入などにより、これからますます物価が下がると言われています。そういったもはや自明である未来のメリットとデメリットを視野に入れて、今のうちにその現象に順応できるライフスタイルや基本スタンスを培っていくというのは欠かせないプロセスなのかもしれません。

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