「星を継ぐ者」
(著) ジェイムズ・P・ホーガン
(出版) 創元SF文庫
SF(サイエンスフィクション)というジャンルは高度なテクノロジーを駆使して、ロボットや宇宙人と出会って過去や未来、はたまた宇宙を駆け巡ったりすることが多いですが、たまに「オイオイそんなご都合主義な設定でいいのか?」みたいな場面もあります。
そもそもそんなテクノロジーが現実世界にないので仕方がないのですが、その中でもほとんど非の打ちどころのない世界観が構築されている「スーパー理系SF本」が存在します。
それが「星を継ぐ者」です。
・元科学者が書くから「なんかマジでありそう」な内容
著者のジェイムズ・P・ホーガンはもともと電気工学、電子工学、機械工学を学んだ研究者で、その経歴が本書の世界観を不自然な箇所を作ることなく理論的に構築できたのだと思われます。
月面で真紅の宇宙服を着た人間の遺骸が発見された。この人物は何者なのか?各国の組織に照会するも該当する行方不明者は居なかった。のみならずC14法による遺骸の年代測定では彼は5万年前に死亡したとの結果が得られ、チャーリーと名付けられたこの人物の出自は全く謎であった。(wikipedia)
上記のとおり、宇宙服を着た遺体が人類が月面着陸する5万年前から月に寝そべっていたというブッ飛んだ状況から物語はスタートしますが、先に述べたとおりホーガンは高い科学的知識を用いて竜頭蛇尾にならない物語を展開していきます。
しかし高度すぎて話について行けないという事は決してなく、様々な分野から召集された科学者の調査の報告を聞く場面では、まるで自分自身がそのグループの一員になったような感覚すら覚え、「な、なんだってー!?」な衝撃が何度も味わえます(笑)
・科学的知識があって文章も上手、理系出身は最強説
日本にも最初は科学者や医者をやっていて後に小説家に転向したという作家が何人かいます。
その中の一人に、「すべてがFになる」を生み出した森博詞がいます。
工学博士の資格を持つ森博詞は作中で難解な数学問題を用いたり、コンピューターを利用したトリックを扱うことで知られています。Wikipediaによると「理系ミステリ」とも呼ばれているようですが、実際にアニメを観た私としても言い得て妙であると感じました。
ホーガンが書いた「星を継ぐ者」は内容が理系である一方で登場人物の会話や物語が分かりやすいですが、対して森博詞が書く小説の主人公や重要人物は会話からしてちょっと難解で、なんだか凝り固まった印象です。それがさらに理論的な雰囲気を出しているような気がします。
おなじ「理系物語」でも比べてみると微妙に違っていて、そこがまた面白いと思った箇所なのでした。
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