「民間軍事会社の内幕」
(著) 菅原 出
(出版)ちくま文庫
安倍政権のマニフェストの一つに「憲法9条の改正」があります。
実質的に「自衛隊の軍事介入を許す」ための取り組みですが、場合によっては私たち民間人も戦場に駆り出されるという事も考えられます。
しかし、付け焼刃の一般人の徴兵では戦力として成り立たないのは明白です。そこで日本政府がとりうる戦略の一部として考えられるのが、民間軍事会社の起用、つまり”傭兵”を雇うということです。
アメリカ戦力の10%以上が傭兵という事実
この本は、すでにアメリカ軍の重要なパートナーとなっている民間軍事会社、通称 ”PMC” の裏側を書かれています。
この本が出版された2010年ごろ、アメリカは9.11から発展したイラク戦争をはじめ、各国の内戦に軍事介入していました。
いくら世界一の軍事力を保有しているとはいえ深刻な軍人不足が浮き彫りになっていました。
その穴を埋めるように南米、アメリカ、ヨーロッパ各地から集まった傭兵を派遣する民間軍事会社が展開され、各戦地で頭角をあらわします。
PMCのサービス内容は多岐にわたっており、実際の戦闘はもちろん、荷物や要人の護衛、物資運搬、はたまた軍人に対する訓練なども行われています。
上記のように様々なサービスを低予算で提供できるPMCは政府のふところ深くまで潜り込んでいて、今ではアメリカ軍の戦力の数十%を担っています。
PMCは退役軍人、とりわけ将校や特殊部隊に所属していた軍人が集まって結成された会社が主ですが、昔から戦争ビジネスは儲かると言われているとおり、設立したら莫大な金が転がり込んでくるため、何百という会社が起業して戦場に兵を送り込みます。
そのため金に目がくらんだゴロツキばかりの傭兵部隊で結成されたPMCも存在しており、各地で問題になっています。悪名高いブラックウォーター社もその一つで、いまも議論が続いています。
武器の横流し、民間人への発砲など枚挙に暇がないですが、それを捜査するためにFBIを送り込むとアメリカ政府は宣言したものの、現場が戦場であるだけに実質的に無理な状況のようです。
すでに日本も関わっている
銃刀法の関係で現時点ではPMCを日本本土で雇うことはできないのですが、海外で民間軍事会社に日本人が雇われるという事はあるようです。
その一例として、冒頭部分で2005年の日本人傭兵の死について取り上げられていま。この日本人は2年間自衛隊で勤務し、のちにフランスの外国人部隊の一員として20年以上活動していました。日本人が戦闘に巻こまれるという痛ましい気持ちと同時に、「日本人が傭兵として戦っている」という驚きがありました。
また、青森県の駐屯地にミサイル防衛用のレーダー搬入の際にブラックウォーターの社員が警備にあたっており、その数およそ100人だったそうです。
まだ紛争地と比べてPMCと関わることが少ない日本ですが、憲法改正で距離が縮まってしまう事も考えられます。すこしでもその分野の知識を増やしておくためにも、この本はとっかかりとして最適だと思います。
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